メガロード誕生
企画の発端は1980年8月に遡る。スタジオぬえはウィズ・コーポレーション(アートミックの前身)からの発注で、テレビアニメ企画『ジェノサイダス』を提出。しかし、シリアスな内容から反応が悪く、別にもう一作、スポンサー受けのよさそうなダミー企画を考案することになる。「変形する巨大宇宙戦艦」「艦内の市街地」「敵は巨大異星人」などのアイデアを一夜漬けでまとめ、巨大戦艦を「メガロード」と命名。企画タイトルを『バトルシティ・メガロード(仮)』とした。当て馬として気軽に作ったため、内容はパロディ色の強い肩肘張らずに見られるコミカルなもので、一部スタッフ曰く「壮大な能天気ドラマ」になった。
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しかし、本命の『ジェノサイダス』よりがこちらが採用される気配が濃厚となったため、極力パロディ要素を除き、宇宙戦争を舞台にした恋愛ドラマ(ラブコメ)路線へシフト。地球の存亡を賭けた戦いと、主人公達の三角関係を同等のレベルで描く、という方向性が固まった。さらに、メカニックデザインがリアル指向に転じたことで、ミリタリー的要素(航空戦)も加わった。その後、ウィズ・コーポレーションの解散でスタジオぬえが企画母体となる。
なお、宮武一貴は未発表ではあるが、『宇宙海賊キャプテンハーロック』に登場するアルカディア号を巨大ロボットに変形させるデザインテストを行っていた。また、艦内に市街地を置くアイデアは、河森が参加したフランスとの合作アニメ『宇宙伝説ユリシーズ31』の企画時に出した案だったが、フランス側に承認されず没となっていた。
マクロス放送決定
広告代理店ビックウエストが『メガロード(仮)』を採用し、タカトクトイスなどのスポンサーと番組放送枠を獲得。スタジオぬえと親交のある石黒昇が主宰するアートランドが参加し実制作の中心となるが、下請けスタジオで制作能力が不十分なため、大手のタツノコプロが元請けとなり、アートランドやアニメフレンド(タツノコプロの子会社)などが下請けという形態をとった。
シリーズ構成は4クール(1年分)の全52話から48話、更に1クール減らした39話となった。この構成で作画作業に入った1982年5月になり、製作側から23話への短縮が要請された。このため、ゼントラーディ軍の敵対勢力の監察軍の出番を全てカットし、制作と並行して内容を圧縮する改編作業を強いられたが、この過程で大宇宙戦争にアイドル歌手の歌を絡めるというオリジナルのテーマが生まれた。
タイトルはビックウエスト社長大西良昌の発案で、マクロ(巨大さ)と『マクベス』(壮大な人間ドラマ)を組み合わせ「マクロス」と改題された。副題は放送直前まで「超弩級要塞」だったが、「弩(ど)」が読めない、という理由で「超時空要塞」に変更された。マクロスの形式名SDF-1=スーパー・ドレッドノートクラス・フォートレス(=超弩級要塞)も、後にDをディメンションに変更されている。なお、「メガロード」の名は1987年発売のOVA『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』に登場するマクロス級2番艦メガロード-01に転用されている。
作画問題
1982年10月3日に放送開始。しかし、スタッフの経験不足、実験的なデザインや演出、話数削減による再構成などの理由で放送開始前から制作スケジュールは逼迫した。 一応、動画用に細部の省略されたメカの設定書もあったが、当時のテレビアニメ制作では避けられていた「戦闘機の高速アクション」「登場人物の衣装替え」などの手間のかかるシーンを多用していた。河森正治は「他のアニメで上手くいった手段は絶対に使いたくなかった」が「やってみたら本当に大変だった」と述べている[2]。
さらに同日スタート予定だった『愛の戦士レインボーマン』の制作が遅れたしわ寄せで、1・2話を連続放送せざるを得ないという不測の事態も追い討ちをかけた。第11話『ファースト・コンタクト』では動画作業が間に合わず原画部分のみを撮影、「アニメーションというよりテレビ紙芝居」と揶揄された。スケジュール苦緩和の一策として、第17話『ファンタズム』は既存フィルムを再編集して制作した(新規作画は一部のみ)。
また、アニメフレンドが韓国のスタジオ(クレジットではすべて「スタープロ」と表記)に発注したものは作画レベルが著しく低く、日本での修正が間に合わないまま放送された。このためアートランドの主力スタッフなどが担当したストーリーの構成上重要な「作画の良い回」と、外注分の「作画の悪い回」の差が極端になり、これらが交互に放送されるという混乱した状況が続いた。
その一方で、板野サーカスに代表されるような、アニメ史に影響を残した描写も随所に登場する。特に、第27話『愛は流れる』におけるデストロイドモンスターの発進シーケンスの描写はアニメ雑誌でも話題となり当時の視聴者をうならせた。モンスターは画面上で歩かない前提のデザインだったが、作画スタッフが3か月を費やして格納庫の床を踏み抜くワンカットを描いた。
延長話
しかし、玩具セールスの出足に満足したスポンサーの要請により、放送開始後間もなく再び36話への延長が決定する。時間的に再々構成は難しいため、実質的に最終回の内容となった第27話『愛は流れる』を区切りにして、残り9話はその約2年後のエピソードを描くこととなった(回想編的な構成を提案したがNGだった)。さらに1983年3月には劇場作の製作が内定。主要スタッフが劇場版や後番組の『超時空世紀オーガス』の準備にシフトしたため、1?27話(戦争編)と28?36話(戦後編)では多分に趣が異なった作品となっている。制作事情に悩まされたスタッフの忸怩たる思いは、1984年7月公開の『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』において、当時最高水準の作画クオリティに結びつくことになる。またこの延長エピソードにおいて、新首都マクロスシティや宇宙移民計画、地球人類・ゼントラーディ人とプロトカルチャーとの関係の解明など、後のシリーズ作品に繋がる重要な設定が生み出されている。
反響・影響
評価
新規アニメ枠開拓を狙い日曜午後2時に放送されたが、休日の在宅率の低い時間帯のため視聴率は平均6.4%[3]に止まったものの、水曜午後5時30分に放送した系列外の山形テレビでは視聴率36%を記録した。
本作はビデオグラムが好調で、1984年のオリコン年間ビデオランキングで『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が34050得点で1位を獲得。この記録を破るアニメは1991年の『魔女の宅急便』まで存在しなかった。サウンドトラックは4作がオリコンLPチャートで10位以内にランクインした[5][6]。
また1989年にバンダイ初のLD-BOXの作品として本作が選ばれている。
アニメ誌でも高評価で大徳哲雄は「『OUT』が最も売れたのは、数字的には『マクロス』のとき」と述べている
作曲家羽田健太郎は主題歌、BGM、リン・ミンメイの劇中歌などの劇伴音楽を作曲し、「ヘルシー・ウイング・オーケストラ」を率いて演奏も担当した。第1回日本アニメ大賞音楽部門を受賞した。
ハードSF的な要素(メカ、軍隊、星間戦争)とソフトな要素(芸能界、日常的恋愛ドラマ)が渾然一体となった斬新な作風については、新世代アニメとして歓迎する意見と戦争描写などに戸惑う意見の両方がみられた[8]。また、昼ドラマのように恋愛劇が進行する延長話(28?36話)の構成は、ファンやスタッフの間に賛否両論を残している。
以降への影響
マクロスの成功により、「マクロスシリーズ」の作品以外でもビックウエストによる「超時空シリーズ」(『超時空世紀オーガス』『超時空騎団サザンクロス』)、『機甲創世記モスピーダ』、『メガゾーン23』などの類似コンセプトを持つ作品が登場した。特にアートランドが制作し、マクロスのスタッフが参加した『メガゾーン23』はOVAジャンル初の大ヒット作であり、「メカと美少女」という現在に続く潮流[10]の先駈けとなった歴史的な作品である[11]。また、本作の「恋愛」「和平」「古代文明の遺産」等のテーマに強い影響を受けて、後に『機動戦艦ナデシコ』のようなオマージュ的リアルロボットアニメも多数生まれている。
本作や『うる星やつら』の人気により、20歳台前半の若手クリエーターの台頭が顕在化し、永野護などの個性が注目されることになる。ガイナックスの前身となるダイコンフィルムは自主制作アニメ『DAICON3 オープニングアニメ』の出来をスタジオぬえに買われ、山賀博之と庵野秀明が「技術研修」の名目で上京し、アートランドでマクロスの制作に参加した。その後制作した『DAICON4 オープニングアニメ』には、宮武一貴や板野一郎、平野俊弘、垣野内成美らが原画協力として参加している。作中にはパロディとして、両腕に宇宙戦艦ヤマトとアルカディア号を付けたマクロス強攻型や、頭部レーザー砲がビームサーベルになるバルキリーが登場する。マクロスに触発されたアニメーターも多く、結城信輝は本作の27話『愛は流れる』を観たことが、アニメ業界に転身するきっかけとなっている[12]。
また、忘れてはならないのが「バルキリー」である。実在する機体(F14トムキャット)に酷似した戦闘機がロボットへ一瞬にして変形するということは革新的であり、後のロボットアニメに強い影響を与えた。マクロス放映終了から半年後に製作された『聖戦士ダンバイン』では、途中から主人公メカとなった「ビルバイン」が戦闘機型に変形可能であり、二年後に製作された『機動戦士Ζガンダム』でも、Ζガンダムが戦闘機形態に変形可能な他、同じ様な可変メカが多数登場する。そういった事から「ガンダム」と並ぶ「リアルロボットアニメの2大金字塔」として、「バルキリー」はリアルロボット群に変形ブームを巻き起こした革命機と言える。また、一部のライターは、バルキリーでの戦闘シーンに触発されて、実写映画『トップガン』が制作されたという説を唱えている[13]。
本作は架空のアイドルが登場する「アイドルアニメ」の先駆的作品としての一面もある。実在する歌手が登場するアニメ作品としては、1978年の『ピンクレディー物語 栄光の天使たち』という先例がある。架空のアイドルにタイアップする形で新人歌手がデビューするというパターンは、メディアミックスの手法として『魔法の天使クリィミーマミ』における太田貴子、『メガゾーン23』における宮里久美、『アイドル伝説えり子』における田村英里子などでも見られた。シリーズ最新作『マクロスF』ではヒロインの一人ランカ・リー役に公募により選ばれた中島愛が同様にデビューを果たしている。
その他、制作スタッフの若手の一部が使用していた「御宅」という二人称呼称を本作の登場人物に使用させたことで、この呼び方はアニメファンたちの間に広まって使われるようになり、これが後のおたくという言葉(の用法)が広まる一因になったという説もある[14]。ただし、「オタクという言葉を使い始めた」と指摘されている河森正治は、『アニメージュ 2001年6月号』にて「僕らより少し上の世代が使っていた言葉」とコメントしている。
日本国外輸出
「マクロス」は同じタツノコプロ制作の『超時空騎団サザンクロス』や『機甲創世記モスピーダ』と同じ世界・同じ時間軸のストーリーとして再編集した“ROBOTECH”(ロボテック)の第一シーズン “THE MACROSS SAGA” として日本国外で放映され大人気となり、現在まで続く日本国外での日本アニメブームの先駆けとなった。それ以前に輸出され人気のあった『宇宙戦艦ヤマト』や『科学忍者隊ガッチャマン』はひどく再編集されストーリーが全く異なり、暴力描写やメインキャラクターの死などがカットされているのに対し、ROBOTECHでは三作品を繋げるための設定変更やキャラクターの名前以外は、ほぼそのまま翻訳され放映されている。その後オリジナルストーリーの続編が作られた他、ワーナーブラザーズが実写映画化を計画中と報じられた。詳細はロボテック#実写映画化を参照。なお『マクロス』単独のハリウッド実写映画化企画も存在したが流れている。
英語吹替え版の『Super Dimension Fortress Macross』は1984年に1?3話収録のビデオが発売されたが、ROBOTECH人気の影で全話収録版は長年発売されなかった。2001年に英語字幕版(日本語音声)で全話のDVD化が行われ、2006年にはADV Films社が英語吹替え・5.1ch音声版のDVDシリーズを発売した。このADV版では米国在住の飯島真理が「英語で」再びミンメイ役を演じている。
続編
その人気から続編製作を求める声は多く、1992年にOVA『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-』が製作された。これはスタジオぬえは関与しておらず、内容的にも前作の焼き直しでセールス的には結果を残したものの旧作ファンには不評であった。逆に河森ら旧作スタッフがこれに触発され、1994年に新型主力可変戦闘機のトライアルを題材にしたOVA『マクロスプラス』、および正統な続編としながら多くの新要素を加えたTVシリーズ『マクロス7』が製作された。さらに2002年には統合戦争を舞台とした前史となるOVA『マクロス ゼロ』 、2008年にはシリーズ25周年記念のTVシリーズ『マクロスF』が製作されている。他にもスピンオフ企画やゲーム作品など多くの派生作品が生み出されている。